当社は開発中の固体酸化物形セル(SOC:Solid Oxide Cell)を使用し、水電解による水素製造と燃料電池による発電を1台のセルスタックで実現するリバーシブルSOCシステムの開発に取り組んでいます。当社の培ってきた様々な技術を活かし、脱炭素・水素循環型社会の実現に貢献していきます。

リバーシブルSOCシステムとは

一つのSOCを用いて「水電解の働きによる水素を製造するSOEC」と「燃料電池の働きによる発電をするSOFC」を切り替えて動作させるエネルギーマネジメントシステムの一種です。再生可能エネルギー発電と連携して稼働することで、余剰電力発生時にはその電力を水素の形で貯め、必要に応じて水素発電により電力を得ることができます。

リバーシブルSOCシステムとは
リバーシブルSOCシステムとは
  • SOEC(固体酸化物形電解セル)による水素製造
    酸素センサで培った技術を活かし、セラミックスを利用したSOECで電気と水から水素を製造することが可能です。メタネーションなどの排熱を組み合わせた高効率な水素製造が可能になります。
  • SOFC(固体酸化物形燃料電池)による水素発電
    SOFC(Solid Oxide Fuel Cell)は水素などの燃料から、電気を作り出す装置のことです。水を電気分解すると、水素と酸素が生成しますがその逆に、水素と酸素を反応させて電気を作ります。

システムの特長と機能

同システムは「電気を流すことで水を電気分解、水素を得るSOEC」と「水素と酸素の反応によって電気を得るSOFC」という2種類の動作を可能にしています。どちらもCO2などの温室効果ガスを排出しないため、カーボンニュートラルの実現には欠かせない技術です。単一のスタックで水素製造と発電を切り替えながら使えるため、SOECとSOFCの併設に比べてシステムをコンパクトにすることができ、設置面積が小さくなるなどのメリットがあります。
SOCシステムでは、セルスタックを700℃前後の高温に保持する必要があり、この熱エネルギーのマネジメントがシステムの効率を大きく左右します。当システムでは内部で発生する熱を有効に活用できる小型で高効率なホットモジュール※を搭載しており、当社が長年培ってきた高温環境下でのセルスタックの電気化学特性を制御する技術や、熱流体解析技術が応用されています。

※ホットモジュールとはセルスタック、熱源、ガス配管類、断熱材で構成された構造体。高効率でセルスタックの700℃前後の昇温、高温の保持が可能です。

システムの特長と機能

システムの利用シーン

発電量の季節間変動が大きい太陽光発電と水素貯蔵システムを組み合わせることで、夏の余剰電力をSOECで水素に変換貯蔵し、冬に不足する電力を夏に貯めた水素によるSOFC発電で補うことで、季節間の電力需給の調整が可能になります。
また、災害などで停電が発生した際、日中は太陽光発電で電力を確保できますが、悪天候時や夜間は電力を得ることができなくなります。SOCシステムは、貯めた水素でいつでも発電でき、昼夜問わず柔軟にエネルギーを供給できる電源となるため、非常用電源としての役割も果たすことができます。

システムの利用シーン

今後の展望

今後はSOCシステムの改善活動や稼働実績取得に加え、社会へのSOCシステム普及促進のための啓蒙活動、協業パートナーの探索をおこない、製品化を目指します。
当社はSOC事業において、セルスタック、ホットモジュール、システムを広くお客さまに提供できる、業界のリーディングカンパニーを目指し、持続可能な社会の構築に貢献してまいります。

  • オリジナル番組

    #6 “部品メーカー”が起こす エネルギーイノベーション

    #6 “部品メーカー”が起こす
    エネルギーイノベーション